IN THE WOODS

x'mass tree

THE NATION'S CHRISTMAS TREE

 アメリカ・カリフォルニア州のセコイア&キングス・キャニオン国立公園には2
本の有名なジャイアント・セコイアの巨木がある。一つがTHE GENERAL SHERMAN
TREE(シャーマン将軍の木)と呼ばれる世界一大きい木だ。
 そして、もうひとつがGENERAL GRANT TREE(グラント将軍の木)だ。別名、THE
NATION'S CHRISTMAS TREE(アメリカのクリスマスツリー)という。クリスマスシー
ズンが始まる12月上旬、周辺の人たちはこの木の下に集まり、クリスマスを祝うと
いう。私も雪のシーズンに見てみたいと、12月23、24日に訪れたことがある。
 その日、私は日本で友人が録音してくれたレゲー調のクリスマスソングばかり集
めたカセットテープをレンタカーのステレオから鳴らしながら、THE NATION'S
CHRISTMAS TREEの駐車場へと向かった。道はうっすらと雪があるものの、走るのに
支障があるほどではない。山腹も真っ白というほどではない。
 午後3時過ぎに駐車場に到着。周囲の木々の枝の雪はすべて落ちてしまっている
。あまり、クリスマスらしさは感じない。それでも、車から外に一歩踏み出すと巨
木が放つ濃密な森の匂いが満ちている。
 私は三脚にカメラをセットして、THE NATION'S CHRISTMAS TREEへと向かった。駐
車場を出てすぐに根株がむき出しになった倒木がある。大地に横たわった姿を間近
に見ると、ジャイアント・セコイアがいかに大きいかが分かる。木のそばに立つと
、まるで壁のようで反対側はまるっきり見えない。
 よく整備されたトレールを進むと、木々の間から突然、姿を現した。大きい。そ
して、きれいだ。3年前の夏に一度訪れていたが、改めてその姿に惚れ直す。根本
の周囲は32.8m、根本の直径は12.3m、高さ81.5mだ。大きさでこそ、THE
GENERAL SHERMAN TREEには及ばないが、その枝振りの美しさはこの森で一番だ。
 CHRISTMAS TREEの正面のベンチには、一組の老夫婦がいた。二人が「メリー・ク
リスマス」と手をあげにこやかに微笑む。ワインとサンドイッチ、果物が置かれ、
本当にクリスマスを祝いにきたことが伺える。しばらくすると、二人はCHRISTMAS
TREEの前で、ただ時の過ぎるのを願うように抱き合っていた。老夫婦の目には独り
ぼっちの私はどんなふうに映ったのだろうか。異国から来たカメラマン、それとも
ロンリー・ピープル……。
 正面からの姿を何カットかカメラに収めると、私はTHE NATION'S CHRISTMAS
TREEの周囲を柵沿いにぐるりと一周した。一番美しい姿が望める箇所に、三脚を据
えると、太陽光線の具合を確かめながら、しばらく見惚れていた。積雪は少ないと
はいえ、立ち止まっていると、徐々に足下から体が冷えてくる。ザックのなかから
チョコレートやリンゴなどを出して、かじりながら時を過ごす。少し見る位置を変
えて、また見上げる。時計を見ると、いつの間にか2時間が過ぎていた。
 私はもう一度ぐるりとまわり、その全体像を目に焼き付け、車へと戻った。
 (沫谷栄児)

in the woods

home