MY FIRST SKI RACE
ヤンオジまっちゃんの真実レポート
初めてのテレマークレース 文・松倉一夫
> 緩斜面なら何とかテレマークポジションがとれるようになった私。自分でも日一 日と上達しているのが分かり、何年かぶりにスキーを楽しんでいる。下手くそなが ら20年近くやってきたアルペンスキーは、もう上達する気がしない。年に2、3度 行くが、すぐに疲れてお茶タイム。どこを滑っても昔のような新鮮さを感じないの だ。ところが、テレマークスキーをはじめてどうだろう。まだ延べ1週間足らずだ が、毎回楽しくてしょうがない。練習しただけ上手くなる。朝より夕方、前日より 今日と、みるみる上達していく。密かに、自分はテレマークのセンスがいいのでは と思えてくる。そんな私の元に電話が入った。 「まっちゃん。レースに出てみよう」 シニアクラスで何度となく優勝しているロクスノ編集長の伊藤さんからだった。 裏磐梯スキー場でピーロートカップ杯のテレマークスキーのクラシックレースがあ るというのだ。 「まだ早いですよ」 もちろんはじめは断わった。以前に他のレースを取材し、とてもじゃないが急斜 面を滑り、斜面をかけ登り、ジャンプをするなど無理だと思った。でも、詳しく聞 いてみると、ビギナーズクラスがあり、そっちはジャンプや登り返しはなく距離も 半分ほどだという。「それなら……」と曖昧な返事をしていたら、いつの間にか出 ることになった。 大会前日はクリニックに参加。ビギナーズクラスとは言え、他の人たちはみんな 上手だ。どんな斜面でもしっかりテレマークポジションを決めていく。聞いてみる と、ビギナーとは言え、3年以上やっている人もけっこういる。ビギナーズクラス は申し込みさえすればテレマークスキー歴に関係なく誰でも参加できるという。 「こりゃ無理だな」 明らかにビリ争いをしそうなのは目に見えた。さらにどうも右ターンがうまくい かない。ところがクリニックで山開きのターンを教えてもらうと、私の滑りは変わ った。山足を前に踏み出すことで、ターンのきっかけがつかめるようになったのだ 。だんだんリズムに乗れてきた。私よりもリズムが悪い人も見られる。上手くいけ ばビリは免れるかも……。あとは本番あるのみ。 日が開けていよいよ大会当日。レースは10時スタート。一足早くスキー場に乗り 込むと、昨日習った山開きターンをおさらいする。 「まっ、何とか転ばすにいけそうだ」 そう思ったのも束の間、レース前のインスペクション(下見)で浅はかな考えは 消え去った。ビギナーズクラスのコースは緩斜面で短いとは言え、やっぱり旗門が あるとかなり滑りにくいのだ。練習バーンでは自分のタイミングでターンをできる が、本チャンコースだと、無理にターンをさせられるといった感じだ。しかも、先 に終わったマスターズクラス、ポイントクラス、レディスクラスが滑った後の旗門 脇は深くえぐれている。そこを否応なく滑らなければならない。しかもテレマーク ポジションを決めながら。旗門をどちらからくぐるのかも間違えそうだ。昨日、芽 生えた10位以内の目標は完走へと変わった。 いよいよビギナーズクラスがスタート。15秒おきほどにスタートしていく。刻一 刻と自分の番が近づいてくるが、思ったほど緊張はない。まだはじめて延べ7日。 転ばずに完走できればOK。目標が低いだけに気楽なものだ。 何人かがスタートして2つ目、3つ目の旗門で転んだ。傾斜はゆるいがカーブは きついのだ。あそこは注意だ。自分にいい聞かせる。 ついに私の番。他の人のスタートに倣って、ゲートの先にストックを突いて、ス キー板の先端をゲートの下にくぐらせスタートを待つ。前走者を見ると、先の旗門 でこけている。すぐにスタートしたのでは追いついてしまうと思う。まだそんなこ とを考えられるだけの心の余裕がある。 「行きます」 スターターのかけ声で、あの「ピッ、ピッ、ピッ、ピーン」という音が響く。出 だしはゆるい斜面。ここでスピードを乗せないと好タイムは得られない。スケーテ ィングをしながら勢いをつける。左足を前へ踏み出しながら右ターン。1つ目の旗 門は何とかうまくいった。次の左ターンが問題。こけないようにやや足を開き気味 にターンに入る。左足が十分に引き切れていないことがわかる。 「減点か?」 頭をよぎる。山足が谷足より足一つ分後方に引かれしっかり踵が浮いていないと 1秒のペナルティーをとられるのだ。減点されたらその分、スピードで稼げだ。そ れ以降はただただ夢中で飛ばした。長いことアルペンスキーをしていたからスピー ドに対する恐怖はない。 「こけたらこけたでいいや」 いつの間にか、完走よりスピード狂となっている。吹っ切ると我ながらけっこう 早い。体重が重い分、滑り出すと加速する。途中、360度のヘリコターンをクリ アしさらに飛ばす。意識の半分はテレマークポジションよりスピードだった。最後 は大滑降のレーサーよろしく前方に小さくかがみ込んでゴール。 2本目に向け、リフトに乗っていると、1本目のタイムが放送された。1分18秒 26。思ったよりもいい。半分以内にはいる模様だ。2本目しだいで入賞も狙える かも知れないとの思いがよぎる。 そして2本目スタート。1回目よりスピードを抑えてもいいから、今度はテレマ ークポジションに注意して滑る。1本目でだいたいコースも把握できたので、スピ ードの殺しどころもわかった。1回目明らかにペナルティをとられたと思える旗門 を慎重に通過。しかし、ヘリコターンでしくじった。入りで大回りしすぎて大幅に タイムロス。ゴールしてみると1分24秒55。約6秒遅い。 「まっ、初参戦としては上出来か」 私より明らかに遅い人もけっこういたからビリはないと一安心。そして、表彰。 結果は6位入賞。できすぎの成績に思わず飛び上がり、会長と肩を組んで記念写真 。副賞としてカメラケースをいただく。来年は3位以内だ。BACK TO "Beyond Risk" PAGE(寄稿とお便りページの目次へ)
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