山飛びのススメ

伊藤忠男

 左からCHU FLYING PERICHE,KHMBU.NEPAL. 
TOMY FLYING  BUGABOO,BC,CANADA AND YOSEMITE,CAL,USA.
 
 
 Hi,ここは、鹿島槍の主稜線で布引を南寄りに少し下がったあたり。西風がちょっ
 と強いので様子見といったところ。暇なのでダイナブックで遊んじゃおう。...ケケ
 ケ


 ”山飛び”なんて、お勧めできません..おおーっと、開くなりこれはないか。...
.しっかし、あぶねえもんなあ、第一ひとに勧められてやるもんじゃないぜ。うーん、迷
ってる間にしっかり回線代払わしちゃってるから、ま、とにかくそれ指向のひとに役
立ちそうな話を書いてみますけど、私だってこの世界の第一人者どころか、河原の礫み
たいな平凡人間ですから、どうでしょうかね。

 私はこういうこと絡みで飯食ってる訳じゃないすから、誰もやんなくても別に困らない
んですよ、というよりか、じつはあまりやって欲しくないくらいだ(だって、ピークで
機体を広げる奴がうじゃうじゃしてきたら、たまらんぜ...と思ってしまうくらいこ
の世界は広がる可能性があるんだな)。

 マイノリティーにこそ”市民クライマー”としての居場所を見いだしている私には、マ
イナー山スポーツの担い手たち(例えばパラの専門誌やフリークライミング協会、TA
Jの機関誌などの書き手、書かられ手(?))が共通して醸し出す”メジャーになりた
い志向”みたいな現象(あのもっと流行らせたいってヤツよ)は分からない訳じゃあり
ませんが、大変陳腐にも思えます。ヤベエ、やっぱりこれじゃ、勧めるどころじゃなく
なっちゃったぜ。

 もとえ;クールにいきましょうか。じつはパラはクライマーがやるのが一番いいと思い
ますヨ。もともとアルプスのクライマーが開拓した分野ですから当然といえば当然。従
って、その起源も”山飛び”です。

 どこのエリアで飛んでも海風を使うエリアを別にすれば”山飛び”にはちがいないので
すが、現在では登山にパラを持ち込んだとき”山飛び”と言います。


 フライト技術そのものに”山飛び”固有のものはありませんが、たいていフライト・プ
ランは一切のシュミレーションなしで実行されます。つまりオンサイト(初見)!!。

 この概念は、はっきりいって現在のパラの世界では異端です。パラの神髄と目されるX
Cフライトでさえ、殆どのパイロットが事前に組み立てたプランに沿って地上で踏査確
認を行いますし、フライト自体も人間の生活圏の上空からそう離れずに行われ、地上か
らのサポートさえフェアな手段の範囲と考えられています。

 クライミングの価値観の根幹を成す”初見”や”ノンサポート”という概念は、他のス
ポーツでは見たことも聞いたこともありません。従って、登山(当然クライミングを含
む)技術や登山倫理を身につけていないひとにとっては、テイクオフする地点(頂上も
しくはその近辺)までたどり着くすべと、初見でフライトに立ち向かうこと、さらに生
活圏へ脱出する能力(ときには、氷河のまっただ中に降りなければならなかった、とい
うこともありますからね)が特別に必要とされます。これってクライマーならそう手こ
ずらずに受け入れられることばかりでしょう。道具への依存度が高いことと、体育的な
動作が殆どない面に抵抗があるかな、ことに生っ粋のフリ-クライマ-だと。

 しかし、スキ-やボ-ドと同じに道具を使いこなす面白さってのも悪くないよ、諸君。
言っとくけんど、頭はめっちゃ使うぜ。こらこら頭突きじゃねっての。もっともご先祖
さまが猿と信じ込んでる(わしのは鳥なの)カチカチ派にはちっときついかもね。ん?

 なぬ、どう面白いかって?! そうか、そいつを書いてなかった。じつはわざと書か
なかったんだけどね。でもやっぱり書かないことにします。飛んでみるのが一番。ひとた
び足下に展開する光景を目にすれば、机上で面白さを論じることになんの意味もないこと
に、すぐ気付いていただけると思いますからね。行動派のみなさんならよくお分かりでし
ょう。

 さらにクライミングに”空”を組み合わせた胸の踊るようなプランがよぎったとしたら、
KISYAの恐ろしいダラリンビレイ極刑から私が解放される日も近い(これ、楽屋ギ
ャグ)。

やれやれ、ぼちぼち風も安定してきたと思ったら雲低が下がってきちゃったよ。残雪が
多くてそれでなくても接地逆転層でフォロ-なんだし、やっぱ今日はだめだにゃあ。ダ
イナブックのバッテリ-もやばくなったし、帰ろ、 トホホ、徒歩で下る、なんつって。
(KIMデスロー囚人:chu 記)


  

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