白い粉の魔力的世界。今、パウダーの時代!?(Rock&Snow98-spring issue)
THE POWDER AGE
HIARI MORI
POWDER誌の日本語版がでたり、スノーボード誌が軒並みパウダー特集とやらを企画したり、時はまさにパ ウダー時代の感がある。 スノーボードが元気なのにくらべて、スキーのほうはいまいちだ。理由はいろいろあるだろうが、パウダー (深雪)に関して言えば、スノーボードはパウダーを滑りやすいということが挙げられるだろう。 スキーヤーにとって、以前はパウダーは一部のエキスパートのみが楽しめる世界だった。パウダーを華麗 によどみなく滑ることは、バックカントリースキーヤーの到達すべき目標であり、また究極の快楽だった。 パウダースキーはビギナーとエキスパートの差が如実に出るテクニックだったのである。 そこへスノーボードという新しい道具が入ってきたのだが、その道具がパウダーを滑るのに実に適してい ることにボーダー達が気づくのに大して時間はかからなかった。スキーでは何シーズンもかかってやっとの ことで滑れるようになったパウダーでも、スノーボードなら初心者でもスイスイ滑れてしまう。 私も、ス ノーボード歴1年以下のボーダーが10年以上もの経験のあるテレマーク・スキーヤーよりもすばやく深雪 を滑って行くのを目にしたときの驚きは未だに覚えている。 なったことは喜ばしい。ただ、反面ガッカリしている山のスキーヤーが多いのも事実だろう。パウダーの醍 醐味は、何といっても誰も滑っていないふかふかの雪に初めてトレースをつけることである。パウダー愛好 者が増えるほど、そういった斜面に巡り会うのは難しくなってくる。もちろん問題は、いい斜面が少なくな っただけではない。安易に山に入る人が増えてくれば遭難者も増えるし、マナーの悪化もあるだろう。これ から山スキーヤーもボーダーも考えなければならない点だ。どちらをやるにしても、earn your turns!(滑 る分は自分の足で稼げ)という同じ世界、なかよくやりたいものだね。 パウダースキーイングは素晴らしい。人はみな恍惚とした表情になる。アメリカのコロラドのテレマーカ ーはパウダーを滑るとき上体を弓なりにそらし、両腕を天に向かって突き上げる「ソードアーチ」という姿 勢をとる。パウダーの浮遊感、自由感を表現しているのだ。 技術や用具の進歩によって、パウダースキーイングも以前のようにそれほど難しくなくなっているという のも事実だ。ただ、バックカントリーに行けば誰でもすぐにパウダーが滑れるというわけではない 。ブレ イカブル・クラストだったり、アイスバーンだったり、ザラメだったり、重い湿雪だったり…。パウダーを 滑るには同時に悪雪もこなせなければならないというわけだ。パウダーを志す人はそういったいろいろな条 件を含めて全部容認する、つまり何でもOK!という気持ちと技術を持つことが大切だと思う。 冬になると遠い目をして「深雪」とか「パウダーが」とか「パフパフ」とか口走る男や女が奥山に出没す る。”白い粉の魔力”の時代なのだ。(森光)
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