COLUMBIA HAUTE ROUTES

Northern Monashee Traverse with Selkirk Mountain Experience

渡辺賢二


 
1997-5
渡健二
コロラドで2ヵ月ほどバックカントリースキーをした時に山で会った人達からカナダのB・C.でのバックカントリースキーはすばらしいと話を聞いていた。その後、このことは忘れていたがカリフォルニアのシエラネバダでスキーをするために資料を探していた時にカナダでのスキーのガイドサービスについて知り、アスペンの登山用品店に立ちよった時ガイド会社を紹介された。その資料を読むととてもすばらしいことが書いてありさっそくその会社に電話をする。電話に出たのはスイス人のルディー・ベグリンガーだ。のちに知ったのだが社長でこのエリアを唯一知りつくした有名な山岳ガイドである。ドイツなまりの聞きにくい英語で始めは心配した。むこうも'93よりモナシートラバースを始めて以来、初めての日本人であり、それもテレマーカーなので心配であったらしいが話を進めていくうちにOKが出る。聞くだけのつもりが予約までしてしまった。のちに知ったのだが予約は1年前ぐらいにすでにしている人がいるぐらい混んでいるそうだが、今回は予定外で1ケツアーを組んだのでそのスペースがあいていたために予約ができたのである。普通はこのツアーに参加する前にはデュラングレーシャー小屋に泊まって別々のルートを6日間すべりまくるツアーに参加してスキルを確かめてからでないとだめなのだがむりやりお願いした。デュラングレーシャーのツアーも参加した人の話によると最高で、とくにパウダー時は天国のようだとのこと。次回は僕も参加したい(ツアーはクリスマスより4月末まで毎週ルディーが常駐。2月中旬から3月ごろはベストシーズンなので予約がいっぱいである)(スキルはストロングインターミディエイト以上)
予約後Eメールで予定と装備と集合場所が送られてくる。レベルストークの街の近くのWINTER GREEN INNに前日に入りこのツアーの客用にシェアールームにして安く泊めてくれ、おまけにうまい朝食付である。夜おそくには皆あつまり、あいさつをかわす。
出発当日8:00に朝食をすませガイドがやってくる。今回はガイドにスイス出身のルディーとサポートにドイツ出身ローヤスのふたりに客がジャクソンホールから来たノリーン女性テレマーカーMTBダウンヒルスペシャリスト、ドン(トロント)山スキーヤーMTBレーサー、エイドリアン(ケベック)山スキーヤー中年登山家(元120㎞スキーマラソンを2日でこなす)(スキーはあまりうまくない)、ルイー(ポーランド)テレマーカー ロードレーサーに私の5人である。通常は10人前後の数でこのツアーをやるが予定外のツアーのため数が少ない。とてもラッキーである。
だいたいに面通しをして保険にサインをして装備のチェックもなく車で出発である。北へ50㎞ばかり走りDownie Ceekのヘリポートに向かう。ヘリポートといってもただのヘリ1機分の空き地で、その近くを走っている時いきなり山からヘリがあらわれて我々をPick upし、いっきにBovrne Glaicerのキャンプ地に向かうヘリにのる際、横の土手にいきなりムースのメスがあらわれカナダに来たことを実感させられる。Glaicer到着後その場にテントをはり、さっそく前に見える山に向かう。ピークの名前はないがノリーンが「私の乳首ににているでしょう」と我々にノーブラのTシャツを見せるので、そのピークを「ノリーンズ ニップル」とすることにする。30分ほどゆるやかに登りながらトラバースし、50度ほどの急斜面を板をはずし、ガイドのキックステップにそって登りその後、板をつけなおし、登りトラバースし、ニップルにつく。テント地から1時間30分ほどの行程だ。時間が遅めだったのでガイドがなだれの危険をふせぐため早いピッチで登るので私はペースについていけず先がおもいやられる。
頂上着後休みなしで下降する。下降は25度~30度ぐらいの斜面をとおるがクラストし、アルペン式ジャンプターンでなんとか切りぬける。荷がないので楽である。斜面途中にクレバスの横を通る。2~3日前に雪が30㎝ぐらい降ってそれがクラストしとてもすべりにくく、又その雪は軽くなだれクレバスをさけるためトラバースする途中足をとられる。皆ここは慎重に下る。その後、軽くクラストした斜面を何とかテレマークターンで下るが2度ほどこける。ガイドはそんな中すばらしいテクニックでスムーズに下り感心させられるが他のメンバーもエイドリアンがすこし苦戦しているがすばらしいスキーをする。ノリーンのテレマークは完璧なポジションでジャンプテレをし、クラストをやぶりパワフルに下降する。すごい!!メンバーは足並みもそろっているし、おもしろいしでラッキーである。
GOR2人用テントでエイドリアンと一緒のテントになる。天気は快晴。
2日目 今日も快晴だ。朝4:30に起きて空を見てほっとする。朝食をとり、テントをかたづけ5:45にテント地を出る。ゆるやかな登りをガイドを先頭にして皆早いスピードでもくもくと登っていく。コロラドの時、自分一人でHut to Hutなどをこなしていたので自分のペースで歩き休みをとっていたので今回の早出早着休みなしで歩きつづけるスタイルはヨーロッパに行った時に知っていたが、さすがにカナダでもやるとは思っていなかった。
もちろんコロラドと違いグレーシャーの中にクレバスがあり、今なだれの危険があるという条件はあるが。またガイドがヨーロッパ人だからという点もあるかもしれない。
まあ私は疲れぬようにマイペースですこし皆よりはなれて登る。途中急登をスキーをはずし直登。2時間ぐらいした所で一瞬休みCAT PEAKの取りつきまで登り荷物をデポし5分ほどスキーで登り、スキーをデポし急登をストックを逆さにして突きさしながら登りガイドの作ったキックステップをロープで確保してもらいながら登る。稜線に出てリッジになった所からすぐがピークである。すばらしい景色に感動する。CAT PEAKに9:30に着くピークは畳2畳ほどなので7人でいっぱいである。360度のパノラマを楽しみ皆でイーハーという。ガイドに確保してもらい1足1足下りスキーをとり荷をPickしてここよりいよいよ下降である。登ってきた逆側に延々続くスロープを今回のテント地まで下降する。雪質は昨日のスキーとうって変わってコーンスノーで重い荷が気にならないぐらいにすべりやすく、皆で写真をとりながらすべる斜度も20~30度ととてもきもちがよい。12:00にテント場(Big Eddy Creek)に着きデポしてあるビールをさっそくとりノリーンがウエイトレスになりテレマークターンしながら皆に配る。昼食をとり一息入れ僕とルイーで手前の急斜面に登り、ひとすべりするが雪が悪くアルペンジャンプターンでお茶をにごす。その後はよい天気なのでごろごろする。
3日目 4:00起床。天気は快晴だがすこし風が強い。いつものようにせかされる様に朝食後テントを片づけて5:30に歩き始める。美しいアイスフィールドを見ながらゆるやかなトラバースを登っていく途中カメラの中にゴミが入っていることに気づき、それを取ろうとしたが取れずとまどっていると皆はガイドと先にさっさと行ってしまい遅れをとる。2時間半ぐらい休みなしで歩いてついていくが、さすがに疲れひとり休みをとり、軽く食べてパワーをつける。その後Colを板をはずしKick stepで登ると目の前にSchrund Peakとその大きなコーニスが見える。ここでは皆は待っていてくれた。荷をこの先ですこしおろし、板にアイゼンを付けてすこし登りKick stepで50度弱の斜面を直登。又板を付け3分ぐらいで9:00にSchrund Peakに立つ。エイドリアンだけは疲れていたので荷の所で待っていた。写真をピークでとり下降する。直登する斜面を下降するのかと思ったが、さすがにガイドがすこしトラバースさせて斜度を落としてゆるめの40度ぐらいの所を6~7ターンすべて荷の所にもどり、いよいよここから本格的に下降する。下降にあたってすこし時間が早いので雪の変化を10分ほど待つが、風でコンディションがかわりそうにないので下る。下降路はとてもきもちのよいテレマーク向きの大斜面で思ったよりも雪が悪くなく、斜度も25度ぐらいで荷もきにならずおもいっきりとばす。森林限界を渡った所ですこしトラバースして本日のテント地(Frisby creek)に10:30には着いてしまう。2日間ここにステイする。風が強めなのでテントをブロックでかこむ。天気はとてもよく午後中ずっと周りでなだれの音がなりひびいていた。
4日目 4:30に起床し朝食をつめこみ5:30にテント地を出る。今日はテントはこのままで荷もザックに昼食程度をつめてテント地から見えるアイスフィールドを登る途中クレバスなどが多々あり、そこのめきを歩いていく今日はクレバスが多いので特にガイドがかたまって歩けと支持を出す。2時間休みなくハイペースで歩きやっと水をとる。風もなくもくもくと登りつづけ汗をかきUnder1枚で歩く。その後、稜線をスキーで歩き直接スキーでSerac Peakに8:00に着く。とてもながめがよく風もなくあたたかいここで皆で写真をとったり食事をとったりしてなごむ。頂上より稜線まですべり込み手前のこぶに板をはずし少し歩き、いよいよ下降である。大きなゆるやかな25度くらいの斜面をきもちよくすべる。雪はコーンスノーだ。時々のクレバスをさけながらすべり途中より深雪の重い雪に変わり皆、特にテレマーカーは手こずる。僕も下にいくまでに2度こけた。荷がもっとあったら大変だったと思う。斜面の底まで行き平らな所をトラバースし、テントサイトまで板をはずし、つぼ足で歩く。ちょうど10:00にテント地にもどる。
今日からガイドのルディーはあらかじめテント地にデポしてあったスノーボードをボレーキットを使いバックカントリー仕様にしガイドを続ける。今日は意外と疲れ、皆テント地の周りですべる者もいなかった。
5日目 4:00に起床し朝食をそそくさと食べて5:00にテント場を出る。途中まで昨日と同じルートをとり昨日よりザックが加わったものの、順調にゆるやかな登りを登っていき2時間ぐらいした所で休む。昨日はそのままSerac Peakに向かうがルートを手前左側にとり稜線に出てそこからすこしトラバースし荷をおき、Glissade Peakに8:00に着く。360度のとても美しいここのピークは広くゆったりしている。荷の所まで比較的急な斜面を下降し荷の所にもどる。
斜面はすこしかためで、とてもきもちよくすべりやすい。荷をPickしゆるやかな大きな斜面を下降しここから45度くらいある斜面を下が崖でこけたら死ぬかもしれないのでガイドの指示で板をずらしたり、カニ歩きしながら高度を落とし斜度がゆるくなった所で又すべり続ける。大きなゆるい斜面をきもちよくすべり平になった所でスキーをつけ、ゆるめの山を登りそこより沢に向かって下降する。始めのうちはきもちよくテレマークを楽しむがその後、片斜面のデブっている斜面を延々とトラバースぎみに下降し、すべるというよりもこけながら落ちていく。この辺はなだれ危険地区なのでガイドがかりかりして急げと声をかける。急げにも、こけながら落ちていってぼろぼろであった。
なんとかそこをきりぬけ、その後重い深雪の沢をひとすべりして又スキーをつけデブリの跡のあるおおきなコーニスが上にあるいやらしい所をトラバースぎみに登りアンフィシアターになっている湖の上でひと休みする。ここで雪をほり水を取りここから見える最後の沢をできるだけスキーで歩きその後つぼ足で一歩一歩登っていく。ここも軽くデブリの跡があり危険な所だ。現に登っている時に少し表層がくずれてきたが幸いゆっくりだったのでよけて登った。ガイドは上でさけんでいた。この沢を登った上が今日のキャンプ地だ。(Tour Rande Swridge)
11:40着。とても天気がよく、暖かかったのでノリで全裸になり手前の斜面を数ターンした。皆にはおおうけであった。それにしてもきょうはなかなか大変な一日であった。6日目 4:30に起床。昨日夕方より雲いきがあやしくなり夜ぱらぱらと雨が降ったが
今日はなんとか天気が回復した。テントと共同装備はここにデポし5:30にTour Roudeに向けて登る。スキーのまま頂上直下まで行きスキーをデポしつぼ足で荷とともにピークに7:00に立つ。スキーをPick upしここから下降が始まる。重い深雪を苦労しながらすべるが皆はすばやくすべっている。一回トラバースし、なだれのおこりそうな所を一人づつ離れて渡り、ヘリのPick up pointまでいっきに下降する。8:10着。ここで10:00までヘリを待つ時間があるので先ほどの斜面を皆ですこし登りすべる。皆で集合写真をとりガイドと握手をかわす。フライアウト後、車でレベルストークにもどり皆シャワーをあびガイドのルディーの家でお茶を飲む。
今回のような縦走は年によってこの会社がルートをかえたり場所をかえたりするので再度参加する人がたいへん多い。このガイドシステムとしてはヘリで森林限界を越えて、そこから縦走し又ヘリでPick upというものだ。又、荷物は夕食だけは各テント地にあらかじめヘリでデポしてあり個人は個人装備の他はテントと共同装備のナベとMSRを各自わけて背負う。コロラドなどのHut to Hutに対してPeak to Peakとでもよべる旅である。朝食と夕食はガイドがつくってくれ昼食はクッキーやサンドイッチ程度のものを各テント地で配られ各自てきとうに食べる。
今回のツアーは天気に恵まれたが昨年は1週間すべて雨だったとのこと。もちろんこれは例外でありこの時期は天気に恵まれることが多いが、そのようなこともあることは頭にいれておきたい。もちろん雪だって降る。スキー技術はもちろん上級が必要だが体力的にも強いことが望ましくスキーで北アルプス縦走ぐらいやったことがあるスキー技術と体力が必要だ。なお今回とったルートはカナダのTOPOMAPのNo82M/7、82M/2、82M/8です。装備については一般の物と変わらないがテレマークスキーでもスキーアイゼンはあった方がべんりだ。ザックは夕食を持たないので今回は60㍑を使う。なおこの周辺やジャスパー、バンフ間にはバックカントリースキーができる所が多々ありRocky Mt.BooksのChic Scott著『SUMIT & ICEFIELDS』が詳しく書いてある。ワプタトラバースは有名だ。ヤムナスカでガイドサービスもやっている。又、同社同著の『SKI TRAILS in the Canadian Rockies』もあるがこちらはいまいちだ。又ゴールデン近くのロジャーパスはバックカントリースキーで特に有名でアプローチも楽で、その最寄りのパークステーションで『TOURING AT ROGER PASS』という地図by DRUID mountain enterprises(Calgary)を得ることができるので参考にされたい。特に上級者にはYoungs Peakをおすすめする。なだれには十分気をつけるべし。

Selkirk Mountain Experience
Box 2998 Revelstoke B.C.
V0E 2S0
CANADA
Tel 250・837・2381

Yamunuska Inc.
1316 Railway Ave.
Canmore AB
T1W 1P6
CANADA
Tel 403・678・7992
  

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