奇跡の晴天、天はわれらについた
1998-4-22.5-7 メンバー 北田、溝部、真壁、渡辺、西原、ひろゆき、ベン、マット、汽車 昨年に続きカリフォルニアのシエラに春スキー遠征することになった。 メンバーは昨年とおなじ。さらにベンちゃんのお兄さんマットも参加するという。総勢9人の 大部隊だ。日米合同ハイシエラ横断隊と名前をつけておこう。 ヨセミテ見物などしながらサンフランシスコから南下。フレスノでバーディ兄弟と合流。 4-24 前日、V8の14人のりの巨大バンをセコイアナショナルパークの入り口ジャイアントフォレス トに置く。何日かのちにここに下ってくることになる予定なのだがどうなることやら。マーキ ュリーというロコ航空会社の小型機2台をチャーターしてフレスノから編隊飛行でシエラを東 にひとまたぎ。45分のフライト。もどりは1週間の予定。1600ドルのチャーター代だ。 インデペンデンスの飛行場で予約していたトラックに分乗してシムズクリークのトレイルヘッ ドへ。11時には歩き出していた。砂漠からのスタートだがやがて雪が出てくる。20キロ近 い重荷と高所のせいか足取りは鈍い。先が思いやられる初日ではある。2700メートルのマ ホガニーフラットまで、6時間ほど。水がとれるのがうれしい。ウイリアムソン山が大きい。 ウイスキーをなめてテントにたおれこむものも。ぼくは調子がよい。 4-25 シェパードパス越え。いきなり3600メートルの峠越えで、高所に弱いものにはアゴがでる登り だ。朝晩の寒さは格別だが日中の暑さも格別。長いゆるい下りに入り、カーンリバーに滑り込 む。行動時間8時間。バテ気味。ぼくは調子よし。 4-26 朝いちで登り始めたマイルストーンクリークが、枝沢で間違いと気がついたのが11時ころ。 ひと尾根まわりこんでマイルストーンベイスンにたどりついたのは2時ころ。きょうはここで テントを張ることにする。とてもこれから4000メートルちかいマイルストーンパスを越え られるものではない。シエラ山中の無名湖畔の快適サイト。くらくなるまでのんびり過ごす。 連日の好天が救いだ。今日の行動時間5時間。 4-27 本日も晴天。マイルストーンパスを超える。峠直下のカールの急斜面を快適のすべる。カワエ ピークからのびる大きな尾根をこえる場所がわからず、うろうろしているうちに日がくれてく る。どうやらかすかなトレイルがみえるヤバそうな斜面をこえるらしいと分かったところでテ ント泊。熊の足跡があるので完全なベアぷルーフを実行。行動時間7時間。 2日間で予定の1日分も消化していないのであせる。連日の好天が奇跡のようだ。ぼくは胃の 調子がよくない。 4-28 早起きして、真壁絶好調で問題の急斜面をこえる。巨大なカールを大胆にトラバースしてトリ プルディバイドパスへ。パスをこえると再びカールの急なすべり。気合いで滑る。さらに長い ゆるいトラバースがあり、アイゼン、ピッケルをつかった登り下りがあり、さらに超巨大なカ ールを等高線ぞいにトラバースして、三たび峠をこえ、さらにもっと巨大なカールを4、5キ ロか、大トラバースしてパスをこえロンリーレイクに滑り込む。いっきにきのうおとといの遅 れを取り戻した勘定だ。数日まえのかすかなトレイルがあるおかげ。奇跡の晴天のおかげ。じ つはこの先行するトレイルを怪しいものとして見ていたわれわれだが、このころには、これは 経験深いガイドに率いられたパーティのものであろう、と確信する至る。 ロンリーレイクからは遥か西に海岸平野のひろがりが見える。先がみえた感あり。胃の調子最 悪で、さけ茶漬けでしのぐ。酒ものまず。持病の胃炎らしい。きょうも人にあうことなし。 4-29 奇跡の晴天はきょうも続く。とはいえ昨夕のうろこ雲といい、きょうの北の雲といい、そろそ ろ悪天のきざしがのぞきはじめている。 地図をみて先行のかすかなトレイルをみてわれわれはすすむ。立山弥陀ガ原の数倍の大きさは あるかと思える巨大複雑地形を紆余曲折して進む。昼ころにはペアレイクのレインジャーステ ーションに到着。さらにひと登りしてヒーサーレイクへ。 荷物も軽くなったいきおいでルート最後のハンプの急登をこえ、2日分を1日で稼ぐ自信がつ いたわれわれは、雪崩のように、V8バンのまつジャイアントフォレストへと滑り込む。あっけ なく駐車場に着。16時。意外とらくな最終日だった。ここでテント張るのもまぬけと、スピ ードドライブでフレスノのトラベルインにチェックイン。シャワーをあびて近所のファミレス で祝杯をあげたのは22時。 天はわれわれに味方した。 翌朝から帰国までの数日間、カリフォルニアはここが常春の国かとおもうほどの梅雨寒の雨ま じりの毎日だったのだから。 このシエラハイルートは、熟知者が好天を狙って軽装で快走すればおそらく4泊5日で抜けら れるかもしれない。ただし悪天に捕まえられたら当分帰ってこれない可能性はある。なにせエ スケープルートなし、避難小屋なしなのだから。さらに、一旦降雪があれば、行程の半分以上 をしめる大トラバースルートは雪崩の巣となるのも間違いないだろう。以上、ぼくの感想です 。 バーディ兄弟と別れ、余った日々をわれわれタホ方面へのドライブとしゃれるが、天気悪く、 ヘブンリーバレーでもスキーせず、各地のアウトレット荒らしで過ごす。サンフランシスコの ユニオンスクエア周辺での活動がわれわれのフィナーレともいうべき行動だったといえよう。