伊藤忠男
南沢大滝核心部を登るCHU今冬は10年振りに冷え込んだ昨シ-ズンからそのまま氷河期へ移行するのかもしれない という一部の無知蒙昧なアイスクライマ-の稚拙な思い込みをちゃんと裏切って、見事な 暖冬でやんした。湯川も南沢も、こんな暖っけえシ-ズンでも東京から裕に日帰りで、そ れなりにバ-チカルな氷の練習ができるとってもありがたいエリアでごんす。 1997-2月9日(日)湯川(八ヶ岳の東側北寄り山麓海ノ口) 前日は甲斐大泉に泊まったので、らくちん。清里から野辺山、小川への分岐を超して30 分で湯川の入り口。国道から5kmほど湯川沿いの林道を走る。雪は多くないが凍ってい る。林道の周辺にすだれのように、氷柱が現れたら、車を路肩に止める。川を覗き込むと 、あるわあるわそこいらじゅうが氷壁。 準備して河原に降りると、さしずめアイスアリ-ナといった風で氷壁に囲まれるが、や さしい壁はほとんどない。「乱菊の氷柱」は、さすがに冷え込みがいまいちのせいか、 みるからに脆そうでトップロ-プでさえ躊躇してしまう。「白髪エリア」の南面は多分 もっとも迫力のある壁で、全体が緩やかにハングしており、しかもロ-プ一杯のスケ- ルがある。すでに陽が当たっていてぼたぼた解けはじめているのでパス。 小沢を挟んだ対面に北向きのつらら状が横に50mほど広がっている。スケ-ルは20 m前後。見た目もっとも安定している部分をはじめ僕がリ-ドし、そのまま残置したハ -ケンを使って、アイスクライミングを始めたばかりのヤッチン(安田至宏)がリ-ド した(5+)。 そのあとすぐ横のハングした部分をトップロ-プで繰り返し練習したが、ラインを変え て2度登っただけで、かなりキテしまった。便利さと難しさに、セカチャンもある。時 代はマルチ~。林道を挟んですぐ上に立っている岩がクラックの宝庫だ。暮れはさすが に凍っていなかったので、コ-クスクリュ-(三つ星ハンド、5.9)、サイコキネシ ス(フィンガ-、5.10+)を登ったっけ。諸君、フレンズ必携だぜ。 3月8日(土) 南沢(八ヶ岳阿弥陀岳西面のクラッシックな氷壁) この日を挟んで東京の気温は連日20度を超えていたので、さすがの私も不安だった。し かし、美濃戸からチンタラ1時間歩いて覗いてみたら、なんとバッチシ。しかも、例年よ りも発達していて、これなら質量とも大同心大滝と遜色なし。 手前にある20mの“初心者、中級者向き”とトポに書かれている滝は、それほど易しい とは思わない。もっとも寝た部分を選んでも悠に4+はあると思った。とまれ、この壁は 初めて両手を放してハ-ケンを打ちながらリ-ドする練習に適している。 ヤッチンが買ったばかりのナジャをぶん回して、僕のリサイクルなしで上手にリ-ドした (5-)。 大滝35mは僕がリ-ドする。何度も登っているが、こんなにきれいに発達 したのは初めてだと思う。通常は2段に分かれているのだが、この日は殆ど1枚壁で、全 体に立ってる部分が長い。 結局、道具のせいもあるが(パルサ-)、いままでで、一番良いスタイルで登れたと思 う。打ったハ-ケンは6本でそのうち完全に体重をかけて打ったのは核心部入り口の2 本と出口手前の1本だけだったから臆病者の僕としては、上出来、“自分を誉めたいと 思います”...カカカ。