田村 和彦、土田 次夫 他 (RSSA同人)古田 徹司 西田 真一(きねずか同人)原 伸也(ビル エバンス同人)
nuketo pict
笠ケ岳も他の山と同様で例年に比べて雪の量は少ないが、 日本海からの風が直接あたるため笠ケ岳周辺は充分に雪がある。 新緑、酒、星、友達、露天風呂そして標高差の大きいスキー滑降など、 きわめて快適な2週連続の山行を楽しめた。 笠ケ岳笠沢(初滑降かも?)と穴毛谷4ノ沢左俣Aルンゼ滑降(第2滑降) 5月21日 笠ケ岳周辺を熟知してるRSSA同人の15名と一緒に新穂高温泉を出発。 奥深くひと味違った雰囲気のある笠ケ岳穴毛谷本谷を登ってる最中、 豪快な岩峰群に囲まれた4ノ沢を登ってる土田氏を見つける。 どこを狙うのか予備知識が全くて地図で確認してみると、 4ノ沢左俣Aルンゼのようだ。 地図の等高線ではなんとか滑降できそうな気がする。 あわてて計画変更し一人で後を追う。 一緒に神戸から来た田村氏は自分勝手な行動にあきれた顔をしている。 両岸が切り立つルンゼ中間部で追いつく。 アイゼンを持っている原は、 最後の手強い巨大な雪庇をへばりつきながら登りきる。 夏道を登り、深い静けさのある頂上着。我々2人にとっては初めての頂。 なかなか高度感あふれる展望に感心。 鋭い切れ込みの険しい谷間には、 予想もつかぬ雪の量の雪渓がいくつもあり、今後の課題として面白そうだ。 他のメンバーは全員抜戸岳に集合し、これから杓子平経由で穴毛谷を滑降すると の無線が入る。 土田氏は6ノ沢を滑降。 主稜線の下降地点で6ノ沢か5ノ沢か分からず悩んだとのこと。 途中の核心部の滝は20M程巻いて本谷へ滑り込む。 原は笠ケ岳の頂上の30M下の尾根から滑降開始。 頂を背に滑る姿を抜戸岳パーティーは全員が見てたとのこと。 2780M地点から緩やかな景色が展開する西面の笠沢を下る。 急斜面だが岩石がほとんどなく、パラレルが快調。 2ヶ所滝が露出し、下部の滝だけ5mスキーを脱いで下降。 滝のでっぱりに、7本ぐらいシュリンゲが絡んでた。 稜線に戻るわずかな170Mの登りは、遅々として足が進まない。 短時間で高度をかせぎすぎたせだ。 クライマックスのAルンゼの滑り出しは、僕の実力ではどうかな と思わせるような急斜面。 地図上の傾斜よりきつく感じるのは大きくかぶる雪庇のせいだ。 滑り始めるまでの3分間どうしようか悩んだ。 心も体もカラッポになり、「エイ」と10Mも下ればあとは狭いが楽な斜面。 ターンする度に雪が崩れる。 滑降したい細い沢の中央をずるずると流れ、それが下部まで落ちるのを 待っているだけでイライラする。 ときどき落石の大音響が四方からこだまする。 左手の剛鉄のような第一岩稜が、垂直に立ちすばらしい。 見上げると、Bルンゼもやれそうな気がする。 1300M地点で雪が無くなり板をザックにつける。 滑降総標高差1650Mの達成感で放心状態。 1日でこれだけ山を滑るのも久しぶりだった。 新平湯温泉でRSSA同人の山スキー祭りに飛び込みで参加。 30名の会員や飛騨山岳会の島田靖さんが来られていて、 楽しい山スキーに関する談笑の時を過ごした。 抜戸岳頂上から穴毛谷本谷滑降 5月22日 快晴の中を田村氏の案内で抜戸岳登頂。 前日滑ったルンゼは本当に垂直に見えた 登高はつらかったが、あとはスキーで往路を下るのみ。 頂上から杓子平周辺は白い広大なカール状斜面で山上の山スキーの楽園。 こんなによい場所ならもっと昔から注目しとけばよかった。 途中にある穴毛大滝(弓折ノ滝)は神秘的で雄大な姿。 ウエストンは2回の地元の非協力から登れなかった後、 この素晴らしいルートを経由して登頂したのだろう。 滑降標高差1410M。 笠ケ岳周辺では、 景色の変化も充分に楽しめる最もポプュラーなコースと思えた。 抜戸岳東面無名沢初滑降 5月23日 昨日の抜戸岳から東面の斜面を観察した時、 各沢は急な傾斜だが滑れるだけの充分な雪がついてる。 地図からは、 下抜戸沢と抜戸岳南尾根の間にある無名沢が一番よさそうに見える。 蒲田左俣林道を歩き、その沢を見上げると、 思ったより雪の量が多そうな気配がする沢だ。 沢の水流で切れてるが、 対岸まで沢から押し出された大量の雪が埋まってる。 2人で思わずニヤリと笑う。 しかしすぐに20M登った所で3M雪が切れている 大きく右に屈曲した部分でも20M間は雪がない。 雪崩の方向が本筋を下らず、小さな尾根に向かうためのようだ。 広大でどこも滑れそうな穏やかな斜面が現れる。 「カッコー」だの「ホーホキキョ」と何種類もの鳥が心地よく鳴いている。 さっそくビールで乾杯してしまった。 稜線にて休憩後雪庇のない部分から滑りだす。 田村氏も快適にニコニコ顔でどんどん滑って行く。 原は、調子にのってスピード感に酔いしれてる最中 雪に隠れた30CM大の石にスキーが衝突し、空中で体が1回転。 石は100M程落ちたが、体は5Mで停止してくれた。 最後の2回のスキー脱着がなければ最高のルートだ。 穴毛谷本谷の下部の雪面のデコボコを思えばなんともない。 ブルーの渓水の端まで滑り込む。 滑降標高差1160M。 例年より極めて雪が少ないことから、途中の雪が切れてた部分は いつもは雪に覆われてると思われる。 大ノマ谷滑降 5月28日 きねずか同人の古田 西田の両氏が、双六小屋周辺を「無茶苦茶に滑るぞ」 との大胆な発言に賛同。 長い林道歩きから小池新道のカール状の雪面を上りきり、 主稜線の大ノマ乗越からトラバースするつもりだったのに 雪が斜面に全くなく、全員「こりゃなんだ」。 「しょうがねーなー」と来た道をスキーで滑降 栃尾の無料露天風呂までの時間は充分あったが、 あまりに新緑が美しすぎて、橋のたもとでツエルトをはる。 夜は大きな静けさの中 素晴らしい星空が何倍も心を癒してくれる。 日本の山の良さを凝縮したような山だ。 滑降標高差900M。 抜戸岳奥抜戸沢初滑降と秩父沢テレマーク滑降 5月29日 テント周辺で雪のある斜面は限られ、 テレマークスキーの2人は比較的傾斜の緩い秩父沢へ。 原は奥抜戸沢を目指す。 真っ青な空色の下、奥抜戸沢上部の急斜面は雪が堅く蹴り込みに時間がかかる。 アイゼンを車の中に置いてきたのを悔やむ。 抜戸岳頂上から下50Mの稜線に出る。 12時50分稜線3M下からスキーを着ける。 40M下までシュルントが連続し、危険な部分は横滑りで通過。 どの稜線からの滑降でも最初の原頭部が一番神経を使う。 先週の4ノ沢の最上部の地形によく似ており、左手には岩がそそり立つが それほど思ったより悪い狭い斜面ではなかった。 下部の石コロ散乱地帯での格闘滑降並びに 左側のガレ場から押し出された巨岩堆積地帯の通過は苦労する。 大休止し、余ったウイスキーによる解放感が心地よい。 足どり軽く新穂高の駐車場に、4時30分着。 滑降標高差1180M。 当初、穴毛谷4ノ沢左俣Aルンゼは初滑降と考えていた。 後ほど飛騨山岳会の瀬木 島田氏らに問い合わせたところ、 1987年5月11日飛騨山岳会の杉本、岩崎の両名により 三の沢を登り、滑られていた。 その記録によると、 「ルンゼ中間部で、2人とも30から40Mくらい滑落。」 Aルンゼの最上部の滑り出しの写真があり、 原が滑降した時よりかなり雪が多い時のように思えた。 いずれにしても、大きな雪庇をどう処理するかがポイントのようだ。 4ノ沢左俣初滑降の記録。 また抜戸岳東面の2コース(奥抜戸沢と無名沢)は、 滑られた記録はまだ聞いたことがないとのことであった。 なお秩父沢周辺は飛騨山岳会の瀬木氏によって行われてる。 2500M以上の山からの急斜面滑降の最適な時期は、 やはり5月の連休を過ぎてからだと思う。 僕の友人達も連休を過ぎればスキーをしまってしまう。 滑降主体の山スキーヤーだったら本当にもったいない気がする。 今回の笠ケ岳周辺は、頂や稜線までのアプローチが新穂高温泉から短く、 日帰り山スキー滑降に最適な中上級者向けのパラダイスと思う。 (参考資料) 1)「北ア笠ケ岳穴毛谷4ノ沢右俣登高 4ノ沢左俣Aルンゼ下降」 飛騨山岳会 瀬木他3名 1981年6月7日 4ノ沢左俣Aルンゼ初滑降の記録。 2)「北ア笠ケ岳穴毛谷4ノ沢左俣登高 5ノ沢下降」 松坂山岳会 田中他4名 1981年5月1日 Cルンゼを登り、稜線から右俣ルンゼの滑降を試すが、5ノ沢へ転進。 カールを滑り、途中からクライミングダウン。 5ノ沢初滑降の記録と思われる。(原記す) 3)「北ア抜戸岳境界尾根登高 東尾根(仮称)滑降」 飛騨山岳会 瀬木他1名 1987年3月30日 北ア抜戸岳東尾根(仮称)滑降は初滑降。(原記す) 4)「北ア笠ケ岳穴毛谷本谷、6ノ沢右俣、7の沢滑降」 飯田氏らが3年間で穴毛谷6ノ沢右俣,本谷を滑降 RSSA同人の「ベルグシーローファー20号」より 4)RSSA同人の牧野氏が単独で今年の5月連休時 打込谷等(初滑降の記録もある?)を滑降の連絡を受けた