原 伸也
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平成4年12月29日-平成5年1月2日 原 伸也(単独) 仙丈ケ岳の北面のスキー滑降は過去に薮沢の記録はあるが、 他はまだない。 雪の多い東面のスキ-滑降は全て終わり、数年前から狙って いた記録のない馬ノ背からのコ-スを正月休みを利用して行 なった。 29日戸台より入山。当初予定していた平右衛門谷 と薮沢の間にある尾根は、樹林のため滑れそうにない。 大平山荘から西に見える大きな尾根の中間に、上部が開けた 沢が見られる。 下部の状況はわからないが、何とか目的は達せられそうな気 がした。30日9時頃から曇空となり、頂上に到着時には3 0メ-トルの視界もない。 滑降中止し、スキ-を頂上の標識にくくりつけて帰る。 31 日停滞。1日(元旦)移動性高気圧のため快晴。スキ-が頂上 にまだあるのか少々不安だったが無事にありほっとする。 頂上から見える北面は雪の量は西面よりはるかに多いが、風の 通り道のためか不気味なアイスバ-ン状に見える。大仙丈沢は 丁度10年前に滑降した時よりも積雪量は多く、思わず安易な 気持ちに引き込まれるが初志貫徹。頂上から来た道を15メ- トル程滑り、凹地から急な北面へ。数回のジャンプタ-ン後、 軟雪に足を取られ転倒。そのまま落ちるかと思ったが、石にひ っかる。気を持ち直し、大きなシュプールをカールのお腹に刻 む。 入口が開いたままの仙丈小屋の脇を通り過ぎるとアイスバーン 。馬ノ背ヒュッテの上方の稜線でシ-ルを貼る。馬ノ背の頂上 でカモシカに出会う。2715メ-トル地点を越えると尾根は 狭くなり、一度だけスキー板を担いで5メートル下る。西側は ほとんど雪がない。地形が複雑で予定の下降地点を探すのに地 図確認が難しい。薮沢のス-パ-林道との出会いにある橋を望 見確認。2690メートル地点でシールを外し、東側へ滑り込 む。思ったより雪の量は深く、膝までの軽い雪。小さな誘発雪 崩が何度も起こる。下るにつれて沢幅は狭くなり、2140メ ートル地点で12メートルの滝に出る。 左の急雪壁を胸までのラッセルで抜ける。尾根は倒木が多くて つらい下り。1950メートル地点でスキーを外して歩く。地 図上の問題の大崩壊は、難なくスキーで通過。堰堤を何ヶ所か 越え、水の少ない薮沢本流を渡りきり林道の橋に15時半到着 。2日戸台へ下山。 参考地図2万5千分の1「仙丈ケ岳」